第99回

句評     村野 太虚
やわらかき手を差し伸べて破魔矢かな  露徒
  幼なごの柔らかい手が破魔矢へむけてさしのべられて匂いたつ新年の情景。

破魔矢
  昔新年に児童が持って遊んだ小弓を破魔弓といい,その矢を破魔矢といった。現在は神社で初詣の人にわかち子どもの災厄よけにもちかえり室内に飾る。

人波や動く境内破魔矢行く  秋水
  本当に今年の正月はどこも晴天で人にあふれた。破魔矢が続々動いてゆく景。
床の間の花瓶に刺さりし破魔矢かな  秋水
鄙神社甘酒みかん破魔矢なし  文福
  暖かい鄙の神社の景。破魔矢はおかずとも甘酒みかんでぬくめあう。
とびきりの笑顔と破魔矢賜りぬ  特許
床の間の破魔矢一本子の寝息  雅柳
  破魔矢立てに太刀のように逆さにおかれた破魔矢。子の寝息を守る。
初護摩や僧正が焚く火の柱  三郎
  従のふたりの僧が左右の大太鼓を力のかぎり叩く。僧正の読経に火炎が天井に届かんばかり。
噴きあがる土鍋は記紀の芹薺  三郎
  芹薺 すずな すずしろ、ごぎょう、はこべら、仏の座。新年の七草。記紀の時代から古代人は祝った。
ふくふくと光る黒豆もうひとつ  大福
  黒豆が季語。ふくふくと、つやつやと。わがチャレンジにも大福、文福と光る詩人が。
初夢の期待大きくニ度寝かな  花乃
  なんとしても素敵な初夢をみたい。
初夢や覚めれば君は朧なり  穭
  君は夢まぼろしと消えた
じゃんけんの強い夫連れ師走市  耕泉
里帰りこたつ湯たんぽ浅間山  文福
  一年一度の里がえり。嬬恋村にはなつかしい湯たんぽもある。こたつもあったかい。やさしい母の笑顔もある。浅間山もわらって迎えてくれる。

秀句三選

入選七句

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