第57回 2013年5月

句評     村野 太虚
還暦を過ぎて四葩の星を見ん  露徒
紫陽花の花びら、これは実は蕚(がく)なのだ。真ん中にぽつんと見える星のようなもの、それが本当の花なのだ。還暦を過ぎてもなかなか真理(物事の本質)は見えないものだが、これからは目を凝らしてできる限り、真理を見つめ、求めていこう。
四葩(よひら)→あじさい。

紫陽花
  6~7月にかけて咲く。花びらに見えるのは蕚である。その色はアントシァニンという色素によるものでこれにアルミニュームイオンが加わると青色となる。土壌の酸性度によって花の色が変わる。酸性だと青、アルカリ性だと赤。老化すると有機酸が蓄積されて赤くなる。別名、七変化、手毬花、四葩、八仙花、かたしろぐさ、刺繍花。

紫陽花の七変化という見せどころ  左近

何の色紫陽花のツボミ話しかけ  秋休

E&Gアカデミーに「紫陽花や」の席題をだした。
  • 紫陽花や雨越しに見るあざやかさ  知紀
  • 紫陽花や集まる希望天を向く  瑞穂
  • 紫陽花や夏はまだかと土砂降りに  雄大
  • 紫陽花や雨間に遊ぶかたつむり  早苗
  • 紫陽花やすずしげに咲く雨の中  潤
  • 紫陽花や小雨に匂う色遊び  明子
  • 紫陽花や梅雨と彩る青の道  萌美
  • 紫陽花やくもりガラスでおぼろげに  高弘
席題なのによくこなされている。早苗さん、萌実さんの句がとりわけ素直で美しい。
おい家守お前も今夜は単身か  五幸
<青蛙お前もペンキ塗りたてか 我鬼> 芥川龍之介はルナ―ルの「ペンキぬりたてご用心」を換骨脱退して作句し、戯文とともに友人達に書き送り興じた。五幸さんはこのタッチに似ていて面白い。単身の自分を家守に託した。

観察と称して庭で毛虫飼う  松竹梅

梅雨晴間いっせいに漕ぐ湯もみ唄  五郎

秀句三選

入選七句

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