第58回 2013年6月

句評     村野 太虚
万緑を我が物として天守閣  穭
<万緑叢中紅一点>ならぬ<万緑叢中白一点> 埋めつくす緑の海の中、白亜の天守閣が一点聳えたっている。天守閣が樹海をわがものにしているようだ。作者ののびのびとした気合と寛闊な気分が伝わってくる。

梅雨
  梅の実が黄熟するころ降るので<ばいう>梅雨といい、ものみな黴を生づるので<ばいう>黴雨とも書く。豪雨でないが降りみ降らずみの天候がつづき6月25~30日ぐらいが頂上。<梅雨の沖寒し雨具に女透く 不二男>

梅雨曇に爽やかな青ルリマツリ  蓮根
   ルリマツリ→西アフリカ原産。ブルアバコ、クラノチ。
雨粒に水面も煙る梅雨雷  蓮根
梅雨空の気分天晴れ飲み会だ  中州
   梅雨晴や気分晴れ晴れ飲み会だ
紫陽花の並ぶ姿に雨感じ  肴
   紫陽花のうすむらさきや梅雨模様
空梅雨に顔を曇らす夏野菜  大福
   空梅雨や思案顔なる瓜なすび
梅雨以外どこにいるのかかたつむり  大福
   空梅雨やどこにもみえず蝸牛
離れてもいいかいいかとしゃぼんだま  左近
   <いいかいいか>が秀逸。 雷の音すいか抱きて走りだす  左近さんらしい。
花火屑からから屋根に涼み船  五郎
   金属と火薬の粉末がパラパラ
蓮の葉に水滴ころげ我写し 庭慈
   蓮の露ころころ我が貌映しおり
向日葵やうつむくこともままならず  文福
   ほんとにそうだ。丈のたかいのは3メートルもある。そのてっぺんに途方もない大きい花をひとつだけつけて、うつむくこともままならぬ。(ほんとうは沢山の花が集まってひとつの花)
    向日葵や信長の首斬り落とす  春樹

秀句三選

入選七句

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