第83回 2015年7月

句評     村野 太虚
かなかなやニンフに出逢うプレリュード  露徒
  ああ ひぐらしが鳴く。夏も終るのか。日の出前日の暮れと ひぐらしはカナカナカナともの悲しい声で鳴く。すき透ったうつくしい翅を震わせて。まるで若い美少女の精霊のニンフがいまにも現れる序曲のようだ。


    陰暦7月13日から15日または16日までの魂祭。盂蘭盆、盆会、お盆、盆祭り、初盆 

初盆に義父の笑顔を思い出す  潜流
  49日もおわり初めて迎える盆。義父の笑顔を思い出す。
盂蘭盆や我より若き母と祖母  雅柳。 腰落とし茗荷漬けこむ盆休み  大雅
  盆休みはバッチリとった。茄子の馬もミゾハギも供えた。今度は妻にいわれて茗荷漬けだ。
晩酌に遠く花火の音をきく  大福
日は西に葦簀の陰に濡れし砂  秋水
ひぐらしや迷子の記憶呼び戻し 灰虹
梅雨開けて涼風恋し水を打つ  拶木
雲の峰紫蘇刻む音響かせよ  七星
蜘蛛の糸しずくは何ぞ第9条  耕泉
この次は我が家においでツバメの子  ろんど
玉音の声かそけくも戦熄む  三郎
ふいと来てつつつと横切る庭叩き  ひつじ
  庭叩き→鶺鴒。ふいときてつつつと横切る。
沸き立つや黒きも混ぜて雲の峰  文福
いっときの勢い集め雲の峰  文福
  いっとき→2時間。天空に点が浮んだと思うやいっときほどの間にむくむくむく。豪快、爽快。雄大。<勢い集め>が白眉。

秀句三選

入選七句

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