第66回 2014年2月

句評     村野 太虚
荒磯や釣人ひとり春時雨  露徒
  荒磯は荒波うちよせる大きな岩石の多い磯。柔らかい春雨の時雨のなかひとり釣り糸を垂れている景。おそらく露徒さん自身の景。


  暦法では立春(2月4日ごろ)から立夏(5月6日ごろ)の前日までを指す。気象学上は3、4、5月の3カ月を春季とさだめているが一般には2月末枯れ草が新芽が萌えはじめたころから4月末までの印象だろう。陰暦では1、2、3月が春。

除雪機の休眠覚ます春の雪  淡雪
   3000メ―トルのマッターホルンを滑降してきてからの1句1投。
露天風呂弥生に雪舞う花巻  小鰤
   花巻→花ノ巻と<ノ>をいれれておけば下5に。
雪をみてよろこぶ気持ち失った  たいこ
   なにを<よろこぶ>気持ちだったのでしょうか。
藤村の詩を諳んじて春来る  蓮根
   いいですね。
荷おろして富山なまりや紙風船  五郎
鳥帰る島には島の掟あり  露徒
椿落ち地を染めたるや火山島  穭
   あかあかと地に落ちた椿ノ花の埋め尽くす火山島。
北の地の魂込めたる雪見酒  文福
   東北は情深く愛憐深き地。才能ありながら不遇の人との奇しき再会の日の句でもあろうか。

秀句三選

入選七句

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