第25回 2010年10月
総評
名句は玉をころがすようにの口の中で転がしてしるだけで愉しい。気分が佳い。
<閑かさや岩にしみいる蝉の声 芭蕉> <越後屋にきぬさく音や衣更 其角>
<市中は物のにほひや夏の月 凡兆><雪解川名山けづる響かな 普羅><みずからの辛さで曲がる唐辛子 紀代><天上も淋しからんに燕子花 六林男><天の川わたるお多福豆一列 楸邨>、、、、、
「俳句10月号」の主力テーマは「暗誦の力」。
「名句は何故暗誦すべきかといえば、それが名句を理解するための王道であり、ひいては自作を優れたものにする勉強法だからである。 橋本栄治」
面白さ、感動、夢幻、生動、味覚などテーマごとに名句100句 あげられている。
10月募集分の中に<日盛りにトンボふれ合う音がする>の句があった。これは無論<日盛りに蝶の触れ合うふ音すなり 松瀬青々>の名句にしらず影響されたもので、結局トンボは蝶には勝てないが、然し名句に憧れ口ずさんでおられることが伺われる。
名句は自然におぼえるものではあるが覚える努力もまた愉しい。
オリオン座
留守番のポチの眺める秋の雨 露徒
<ポチ>が絶妙。
開けられて紙魚急ぎけり秋の夜 文福
本来古書の中に棲んでいて光を当てらるべきでない筈が突然開かれて紙魚はびっくり。本の奥へと <急ぎけり>が絶妙。
噴水や池神さまの鬱を解く 五郎
噴水のほとばしる勢いを眺めていると池神さまも鬱を解いて晴れ晴れとしているのにちがいない。
提案座
<空青く苅田に集う村雀>
たしかに気分のよい、愉しい句ですが、おなじ雀でも <稲雀散ってかたまる海の上 澄雄>
名人の集中力にお互い見習ってゆきましょう。