句評
今月はまず<金木犀>の2句
金木犀風の流れを教えをり 文福
<教えをり>と擬人法を奏功させ老練。少ない言葉でさわやかに芳香を表現して迫力。
璃江下(お)り新妻つつむ金木犀 無冠亭
下りでなく(お)りの状況がややのみこめないが、奇岩怪峰の桂林観光での新妻とのしあわせな状況は理解できる。
<月>の句も7句ありました。
- 稲を刈る老夫婦の月あかり 左近
人も枯れ月が美しい。
- 明月はうさぎの宴の月明り 些事
玉兎はおのれを焼く火、と古説にあるが宴としたのはたのしい。
- 縁側で団子頬張る月の宴 大豆
食欲の月。
- 割増しにすてきに見せる月明り 茜
割増し、はひと工夫
- 満月や狼になれ宵テラス たつを
狼男は満月にオオカミとなる。
- 秋の風ゆれる水面にふたご月 無冠亭
<ふたご月>はやさしい。
<月>の名句です。
秋もはやはらつく雨に月の形(なり) 芭蕉
子規逝くや十七日の月明に 虚子
月の出やほしいままなる草の丈 晃湖
門を出て道を曲がれば盆の月 丈草
十五夜や母の薬の酒二合 木歩
月出でてしばらく沼の暗さかな 予志
夕月夜乙女(みやらび)の歯の波寄する 欣一