句評 村野 太虚
遮断機の向うに春の気配かな 櫓
春がきた、山にきた、野辺にきた、そこらじゅうへきたのではない。遮断機の向うへきたのである。遮断機の向うがわに切り取られて春は鮮明となった。遮断機の向う側に花が咲きわらってくれたのか。
春
春という言葉にはもののときめく明るい響きがあるが暦法では立春から立夏(2月4日~5月6日)。一般には枯れ草にわずかの新芽が萌えはじめる頃から4月末までの印象をさす。<おもしろやことしの春も旅の空 芭蕉>
- 裏山でウグイス鳴きて春を知る トンボ
- 祖父の句や一人暮しの春愁 雅柳 祖父の俳句をひとりよんでいる春愁。
- 一輪の桜をみつけ春来たり トトロ
- 待っていたよ開花宣言春到来 肴
- 行き返り花の見頃をはかる春 大福
- 春禽を霞よりきく高尾山 五郎 ケーブルの終点を左へおれると深い谷があり霞がある。
- 春風や花を見ずに前のめり 苑葉
- ふるさとの春そのものに姉はなり 文福 春のようにやさしいお姉さんなのだ。
- 幾万のひそかな爆発新芽かな 文福 生命の爆発するような歓びが作者の弾力的な肉体で詠まれている。