俳句にチャレンジ＆nbsp;第87回

第87回 2015年11月

句評　　　　　村野　太虚

神渡しささらぐ波のはやさかな　　穭
　　諏訪湖の男神、建御名方神が湖北の八坂刀売女神ののもとに走る時は氷結した湖面に轟音を響かせ亀裂させる。そのあと蒼い美しい水がささらぐ波がうねる。その波のはやさ。

紅葉
　　落葉樹は晩秋の寒冷にあうと紅葉したり黄葉したりして凋落する。紅葉とは元来、草木が霜にあって赤または黄になって「もみいづる」　　健吉

落ちてなほ水底飾る紅葉かな　　風水
神宮の黄葉つらなる兵のごと　　三郎
秋暁や香に振り向く京の露地　　耕泉
娟娟と道に散らして柿紅葉　　苑葉

いちにちと日はいちにちと今日の冬　　穭
　　重いいちにちいちにちをくりかえしてきて今日の冬をむかえた。
冬ざれや大間岬に荒物屋　　三郎
　　下北半島の北端が大間岬。本州最北端の標識とマグロのモニュメント。そこに荒物屋があって吹雪かれていた。
満ち欠けの果ては見えない冬の月　　文福
小春日や鼻低きまま五十年　　文福
　　＜なきがらや秋風かよふ鼻の穴　飯田蛇笏＞から兼題として荻の会に出された＜鼻＞を受けて瞬発された機智の句。作者の鼻は低くもなく高くもないと思われるが。

秀句三選

徒寝蜘蛛蟻守宮初時雨　　靑隹
　徒寝→いたづらね。恋人と離れて独り淋しく寝る。独り寝、仇寝。家中みまわしても蜘蛛やら蟻やら守宮やらばかり。仇な人もいないのだ。ああ、初時雨がやってきた。
コンビニの無い町通る冬の雨　　雅柳
　北海道だとコンビニの無い町が七つもある。たとえばN町。人口２３００人。荒漠と広い町に人家も疎ら。そんなコンビニも無い町にしとしと降る冬の雨。そして私はコートの襟をたてて通りすぎた。
空気すむ石焼き芋と聞こえけり　　空飛
　石焼き芋は何故おいしいか。那智黒石の小石に埋め加熱する。小石から遠赤外線が放射され芋の表皮一ミリのところに発生する摩擦熱を熱源として芋全体の水分を蒸発させる。ほっかほかの石焼き芋。新聞紙にくるんだヤツを空気の澄んだ枯れ芝などに座って食べるとおいしい。いーしやきいもー。とかポーポーとか笛をならしてくるのが＜聞こえけり＞

入選七句

かうして居れぬ師走となりにけり　　左近
煩悩の数の多さや除夜の鐘　　山法師
雲切れて鷹の雄姿や山と山　　雅柳
北風や仁王の鼻も強張りし　　風水
秋暁や香に振り向く京の路地　　耕泉
待ちぼうけ木の葉の色を数えつつ　　ろんど
娟々と道に散らして柿紅葉　　苑葉

エクステリア&ガーデン