句評 村野 太虚
この春を見せてあげたや盧舎那仏 露徒
奈良の大仏は東大寺。この大仏殿に14メートルの大仏、盧舎那仏はおわします。49メートルの大仏殿の中に。御目を半眼のまま。聖武天皇の天平17年以来1200年。大仏、盧舎那仏は大仏殿の中から一歩も外へ出ずにおられる。
春爛漫のさくら乱れ咲くこの明るい日、大仏殿の外へお連れして春を見せてあげたいものだ。盧舎那仏は宇宙の真理そのもの。釈迦如来はその悟りを生身であらわされる役割。
春8句
- 春炬燵まあいつまでも要ることか こころ
<猫さえも素どうりしたる春炬燵 汀子>
- 寒春や岩あらう波絶間なし 花水木
料峭。立春後の寒さ。春寒き波涛の景がみえる。
- 春立ちてここに春あり綾の杉 利涼
綾杉という福岡の地酒はありますが、、、。
- 春嵐連ね古書肆へまろび入る 緑舟
*古書肆(こしょし):古本屋
- 春蘭を摘む手をやめて眺めてる 五幸
- 春うらら見上げる空にひばり舞う 蓮根
- 春遅しつぼみのままの花見酒 淡雪c
- 見上げれば小粒のつばめ春を待つ 如楽女
- 春しぐれ蕾にそそぎて花ゆるむ 如楽女
義経に想いはせるや一人静 如楽女
花の吉野山には義経の鎧、弁慶の掛軸などが現存し、一人静がひっそり咲いている。
山吹のさびしさ隠せぬ黄の盛り 文福
<ほろほろと山吹散るや滝の音 芭蕉>