総評
韮辣漬く妻も五十路となりし日に 緑舟
韮辣漬けは根気がいる。下準備が大変。薄皮を剥く。まずこれが難儀。根元、先端を切り落とし塩漬けにする作業に手間と時間がかかる。自分の好きなラッキョウを長年作り続けてくれた妻も気がつけばいつしか五十路となった。
<五十路となりし日に>でプッツリ切ってある。<その日に>なにをしたのか、それがどうだというのか。読み手の解釈にまかせ抛りだしてある。ここがもの悲しいようなふくらみをもってきてしみじみと読み手の胸にせまってくる。
作久山やらっきょうの花に蝶がつく 綾子
昏睡の妻抱けばいちめんらっきょう畑 柚子
顎の張る一族持ちて韮辣着け 悦子
市に出す韮辣匂ふ雨の中 博子
大ボラを吹きつつ咲けりアマリリス 花水木
アマリリスは古代ギリシャ神話に登場。女羊飼いのアマリリスにちなんでつけられた名。ある祭りの日、絢爛のアマリリスが高い香りを放ちやってきた。慎み深いユリは身をはじらい隠した。それをみたアマリリスは勝ち誇りうぬぼれは頂点に達したが葉がないので花は色あせ萎んだ。花言葉は虚栄。誇り、おしゃべり。内気の美しさ。
太陽に烏が棲めりアマリリス 寥汀
どうしても子宮に手がゆくアマリリス 恭子
妬まるることも幸せアマリリス 三枝
人は人私は私アマリリス コーヒー