第81回 2015年5月

句評     村野 太虚
紫陽花や懺悔の雨の色を成す  露徒
  雨に咲く花。紫陽花が六月入梅とともにやってくる。あの暗紫色の群列。なにやら懺悔のにおいがする。昔、菩薩のまえで僧らが罪を告白して懺悔をしたそうな。しっとり雨に濡れたあの紫色の群列よ。

梅雨
   立春から135日目。六月入梅の日から三十日間をいう。わが国特有の霖雨であるが北海道にはあまりみられない。梅の実が黄塾するころ降るので梅雨といい、ものみな黴を生ずるので黴雨とも書く。(山本健吉)
   <梅雨の沖寒し雨具に女透く 秋元不死男>

訪ひゆけば運河の町や梅雨さなか  山法師
葉に隠れ梅雨ごと咲きて立葵  トンボ
カタツムリテラスの下で雨宿り  笑来詩素
空梅雨を返上せんと豪雨かな  大福
幸先よし梅雨の晴れ間の擧式かな  大福
人恋し梅雨の町屋の京人形  露徒
  らしい町屋の京人形たち。梅雨の日々もはんなりと人待ちがお。
夏めきて地産地消の道の駅  空飛
  地産地消がいかにも道の駅。道の駅にも夏ものが並びはじめて涼しくなってきた。
よしきりの声に合わせる櫂の音  淡雪
  実際に四,五人の友人と近江の湖に舟をのりだして船頭をまじえてのての名作。
紫陽花や花束のごと一軒家  文福
  ある一軒家は紫陽花の大柄な花束の群れで取り囲まれていてまるで家じたいがひとつの花束のように美しい。
片蔭や熱田神宮ひつまぶし 三郎
  神宮南口にあるひつまぶし元祖の蓬莱陣屋はベトナム人であふれていた。
裏白の葉のひるがえる薄暑かな  文福
  裏白の葉はつややかで裏は粉を吹いて白っぽい。羽片の長さ一メートルほど。疎林で日あたりのよいところに群生。正月は飾りにつかわれ鏡餅の下にも下げられる。裏白のひるがえる季節は初夏。ウラジロとハクショの語感。いかにも薄暑。

秀句三選

入選七句

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