第46回 2012年6月

句評     村野 太虚
半夏生孤独な背中見送りぬ  文福
 半夏生→夏至から数え11日目。暁に天から毒が降る。農家は井戸に蓋し、その日とれた野菜を控える。この時期に咲く花だからその名か、その逆か。半夏生→片白草。ドクダミ科。葉の先が表側だけ白く変化する。そこから,か<半化粧>とも。白く垂れた花が見上げるごとく、見送るごとく。
 <孤独な背中みおくりぬ>といわれると見透かされたようで一瞬ギョッとする。妖しく魅力(魔力)的な一句。
紫陽花3句
  • 紫陽花や道端彩るカラフルに  蘭
  • 霧雨にけぶる紫陽花青深く  大福
    色素アントミアニン。土壌の酸性度により溶解されたアルミニュームが根から吸収され、あの青に。その量に比例して青が深まる。
  • 紫陽花の首切られをり夢の跡 文福

 はつものや髭を生やして青胡瓜  空飛
  たしかに誰かに似ている。

 斎女(いつきめ)の踝(くるぶし)に罌粟乱れけり  緑舟
  榊を振翳し乱舞する斎女たち。そのくるぶしで、みよ、罌粟の花が蹴散らされ乱れていることよ。

 夏草や大姉を前にたじろがず  露徒
  旅の果ての古刹でか。大徳、大姉の巨大な墓が鬱然とならび、その前にたじろぐばかり。

秀句三選

入選七句

           *大わくろ *ヒキガエルのような大きくてグロテスクなかえるのこと

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