第76回 2014年12月

句評     村野 太虚
雪女郎まち焦がれつつ混濁す  露徒
  旅の一夜、38度の熱をえて寝こんでしまった。雪深い城下町だった。ああ、いまこそ雪女郎が介抱にあらわれてくれぬものか。もんもんと雪女を待つうちに、ああ意識が混濁してきてねむりこんでしまった。


  昔から「雪は豊年のしるし」といっている。土地の精霊が豊年を村の貢ぎとしてみせるために雪をふらすものと考えた。信州の雪まつりでは雪不足のときでも田楽がおこなわれる時は雪をなげながら「大雪でござい、大雪でござい」と連呼する。

大雪の雪落ちし音ひびき入る  ろんど
どうおんとひとかたまりの大屋根の雪がおちれば、づしいいんと家全体がひびく。
雪ふれば間もたず寂し初詣  拶木
一夜して心新たまる雪時雨  庭慈
雪吊りの技も人よぶ兼六園  風水
福詣まずは弁天あか祠  三郎
  寿老人なんぞより、まずは赤いほこらからまいろうか。
街路樹の影は動かず冬の壁  文福
  街路樹が冬の壁のようにづっしりと。
大根を下げてブーツの女かな  穭
  いけいけのブ―ツ女が大根など軽快に下げて。
初蕎麦や円周率の千桁目  緑舟
  千桁まで計算しました。さてそこで初蕎麦をいわいました。
満ちてをり枝隆々と冬の空  文福
  とにかくこの樹木はづっしりしてますね。作者もづっしりした方でしょうか。

秀句三選

入選七句

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