第70回 2014年6月

句評     村野 太虚
油照蟻になりたるビルの街  露徒
  蒸し暑いどんよりしたこの大都市のビル群から黒いスーッのビジネスマンたちがせっせと出たり入ったり、鉢合わせしたら貌をよせて何か打ち合わせたり、またビルへひっこんだり、列をなしてでてきたり、まるで蟻のようだ。この油照りのじりじりした空の下で。

梅雨
  立春から135日目、6月11日、12日の入梅の日から30日間をいう。梅の実が黄熟するころ降るので梅雨といい、物みな黴をしょうずるので黴雨とも書く。豪雨でなく地雨で、ふりみ降らずみの天候がつづく。 <夕立のかしら入れたる梅雨かな 芭蕉><梅雨の沖寒し雨具に女透く 不死男>

加湿水減らぬと思えば梅雨だった  大福
  添削1、加湿器や水の減らざる梅雨じめり
梅雨空に向かって我先伸びる草  淡雪
梅雨の間の満天の星明日は晴れ  ろんど
雨だれの旋律流れ梅雨の午後  花乃
梅雨晴れに急ぎしちぎるプラムの実  志竛
  添削2、プラムの実とりいれいそぐ梅雨晴間  ※プラム=西洋スモモ
朝凪や蛤おこすあしのうら  三郎
冷酒を飲みてうなずく女かな  露徒
遠雷や貌二つ出る破れ鏡  緑舟
夏祭り眼(まなこ)哀しや農耕馬  文福
水無月の漆黒の田に鳴き集う  高白(新顔さん。)
新聞にくるまれ届く夏野菜  文福
  畑で新聞紙が夏野菜をくるむ時のパサパサした音が野菜の新鮮さをつたえる。素朴で優しい人の心をつたえてくる。

秀句三選

入選七句

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