句評 村野 太虚
葉桜の中に消えゆく江戸小紋 露徒
葉桜→花が散り若葉がではじめたころ。季語としてはは夏。
江戸小紋→小紋染めの1種。江戸時代、諸大名が着用した裃の模様付けが発祥。豪華さの強調がはじまったので幕府の規制がかかり遠くからみたら無地にみえるよう細かくするようになった。紀州藩の「鮫}前田藩の「菊菱」。下って江戸庶民にもはやり「いわれ小紋」。大名は「定め小紋」。
葉桜のころ江戸小紋を着た美女が葉桜のなかへフット消えていった。
さくら散る 5句
- さくら散りデテッポデデッポと鳩の啼く 花水木
おもしろいオノマトべ。鳩がデテッポと啼くといわれればそのようでもある。
- 散りてなお川面に咲きし桜かな こころ
散った桜の花びらが川面にしきつめられまた花がさいているようだ。
- 厳しさに耐えて晩成花吹雪 利涼
修練にたえぬいてこそ人格が形成される。晩成のその人柄は花吹雪のように綺麗だ。
- さくら舞ふ季節が来ると思い耽る 大豆
- 花過ぎて煌めく青葉清し風 大豆
花屑の流れを風の押し戻す 言鳥
蒲公英1句
たんぽぽの途切れることなく村の果て 文福
村の果てまで途切れることのないたんぽぽの道。人もたんぽぽも愉しくあたたかい。
<隣村までに続く愉しさ>の脇句がついている。