第79回 2015年3月

句評     村野 太虚
ふるさとを一つ作りて卒業子  露徒
  何かを卒業するということは ひとつ故郷をつくること。過疎化した田舎の学校を卒業した学生。東京へでてもう帰ってこないか。


   春という言葉には、もののときめく明るいひびきがあるが、暦法の上では立春(2月4日)から立夏(5月6日ごろ)の前日までを指す。気象学上では3、4、5月の3カ月を「春季」と定めているが一般には2月末、枯葉にわずかな新芽が萌えはじめるころから4月末までの印象だろう(龍太)
<おもしろやことしの春も旅の空  芭蕉>

春草や鳥ふんわりときて沈み  左近
  春の鳥はやさしくかろやかに春の草へ
君を待つお茶ノ水駅春の風  雅柳
  お茶の水は若うどの駅。彼女を待つ君に春の風
黄にピンク 青にも見える 春の風  大福
  春風にふかれているので黄、ピンク、青の花のいろがゆらいで見える
春昼や石になりたる親子亀  三郎
  うつらうつら極楽世界へ親子旅
車のけ車庫に吹きだす春一番  空飛
  春一番が愛車を車庫から吹きだしてしまったのだ
春風やストラスブールのギター弾き  露徒
  外遊先のフランス北東部、ライン川左岸の都市、ストラスブールの春の景
じゅんばんこ草の名なぞる春の道  灰虹
道端の草木一本春うれい  拶木
幾千のつぼみ抱えて春の山  文福
  <つぼみ>をかかえて春の山が臨戦態勢に入ったのだから力強い。みなぎっている
山吹や一手に朝陽集めけり  文福
  朝陽のひかりを一手に山吹がひきうけているのだから力強い。みなぎっている 

秀句三選

入選七句

第25回  第26回  第27回  第28回  第29回  第30回  第31回  第32回
第33回  第34回  第35回  第36回  第37回  第38回  第39回  第40回
第41回  第42回  第43回  第44回  第45回  第46回  第47回  第48回
第49回  第50回  第51回  第52回  第53回  第54回  第55回  第56回
第57回  第58回  第59回  第60回  第61回  第62回  第63回  第64回
第65回  第66回  第67回  第68回  第69回  第70回  第71回  第72回
第73回  第74回  第75回  第76回  第77回  第78回