第56回 2013年4月

句評     村野 太虚
干し物のひしめき合うや子供の日  露徒
万艦飾にほしものが干されている。子供のシャツやらパンツやら押し合いへし合いしている。そうだ、今日5月5日は子供の日なのだ。

  この句評がでまわるころはもう中夏に突入しているでしょう。でも句作されている今はまだ春酣(はるたけなわ)なのです。うららかで温かいのが春の様相。
  • 朝ぼらけたけのこ一つ惜しむ春  庭慈    たけのこを惜しんでいるわけでない。春を惜しんでいるのである。
  • 春こぼれ娘が頬にキスをした  灰虹    おさない娘が父の頬にキスをしてくれたのであろう。<春こぼれ>と照応して幸せな景。
  • 春風に吹かれそよそよ草木のワルツ 花乃    やはり下7の字余りは冗長。<春風や草木はワルツ踊りをり>はいかがでしょうか。
  • やわらかき湯をまとひゐて春惜しむ  櫓<湯を纏う>というのがまさに春惜しむにふさわしく似つかわしい表現。春のようにやわらかくなだらかな
  • 佳句。
  • 羅(うすもの)や玉露の里の青畳  五郎    羅をまとった夫人が玉露の里で諸人に茶をふるまっている。すがすがしい青畳をお茶のかおりが通りすぎてゆく。
  • 小さくも同じカタチの若葉かな  文福    噴出してくる若葉たち、いとけない小さな若葉たちは同じカタチをしていた。新鮮な発見

秀句三選

入選七句

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