句評 村野 太虚
干し物のひしめき合うや子供の日 露徒
万艦飾にほしものが干されている。子供のシャツやらパンツやら押し合いへし合いしている。そうだ、今日5月5日は子供の日なのだ。
春
この句評がでまわるころはもう中夏に突入しているでしょう。でも句作されている今はまだ春酣(はるたけなわ)なのです。うららかで温かいのが春の様相。
- 朝ぼらけたけのこ一つ惜しむ春 庭慈 たけのこを惜しんでいるわけでない。春を惜しんでいるのである。
- 春こぼれ娘が頬にキスをした 灰虹 おさない娘が父の頬にキスをしてくれたのであろう。<春こぼれ>と照応して幸せな景。
- 春風に吹かれそよそよ草木のワルツ 花乃 やはり下7の字余りは冗長。<春風や草木はワルツ踊りをり>はいかがでしょうか。
- やわらかき湯をまとひゐて春惜しむ 櫓<湯を纏う>というのがまさに春惜しむにふさわしく似つかわしい表現。春のようにやわらかくなだらかな
佳句。
- 羅(うすもの)や玉露の里の青畳 五郎 羅をまとった夫人が玉露の里で諸人に茶をふるまっている。すがすがしい青畳をお茶のかおりが通りすぎてゆく。
- 小さくも同じカタチの若葉かな 文福 噴出してくる若葉たち、いとけない小さな若葉たちは同じカタチをしていた。新鮮な発見