第49回 2012年9月

句評     村野 太虚
川沿いに虫の楽団揃いをり  文福
 松虫、鈴虫、こおろぎ、クツワムシ、スイツチョ、鉦叩き、邯鄲夢の枕まで、、。おそらくは楽器をもたず、愛嬌と歯切れのよい竈虫(いとど)が禿げ頭をふりたてタクトを振る楽団の指揮者。いとしい夜長の草の楽団。
秋 4句
  • 秋の夜や消えいりそうな寺の鐘  花水木
  • 頬撫ぜて過ぎゆく風に秋香る  トンボ
  • 釣り人や秋の落日見送りぬ  蓮根
  • 秋の空淡き筆跡印象派  耕泉
新涼 6句
 この度はE&Gアカデミ―から席題による大量の出句がありました。<新涼>は秋の季語。<涼しい>といえば夏であるが新涼は秋になっての挨拶。「やっと秋らしくなりました」「めっきり涼しくなりました」といいかわす季節の涼しさ。涼風が肌に爽やかさをもたらして生ずる季感である。さてどの一句にそれがいい留められていますか。

  新涼や今朝も寝床にすべり込み  沙苗

  新涼や足もと冷やす夕の風  正平

  新涼や過ぎゆく夏を惜しみけり  菜摘

  新涼や気付けば止みし蝉しぐれ  昌士

  新涼や虫すだきたる月夜かな  三佳

  新涼や冷房消して窓開ける  瑞貴

(以下。E&Gよりほかに10句ありましたが紙面上残念ながら割愛)

  がまずみや縄文あかしいのがしら  五郎

  新涼や遠ざかるもの見つめをり  露徒
 遠ざかりゆくもの、それは過ぎし夏のあの記憶であったかもしれない。新涼にひたりながら作者は凝視している。

秀句三選

入選七句

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