第90回 2016年2月

句評     村野 太虚
春炬燵コップの酒が笑いけり  穭
  春炬燵は春になっているのになんとなく置かれている炬燵。それにのっかているのがコップだからなんとなくどんな人があつまりどんな愉しい笑いが周辺でおこったかわかる。<幼児の長きあくびや春炬燵 順子>  

啓蟄
  啓はひらく。蟄は虫が土中にかくれ籠る。啓蟄は冬籠りの虫が這い出てくる。定気法では3月6日ごろ。

啓蟄や中州に黒き鳥の群れ  風水
啓蟄や補装閊(つか)えてでれんがな  三郎
啓蟄や試し掘りして空仰ぐ  空飛
   まだ出てこないかと掘ってみたがからぶり。
啓蟄は暦の上か奥の山  淡雪
   奥の山、と構えているのが面白い。
もういいかい啓蟄のまちぐるぐると  特許
寝返れば胸の痛みや藪椿  露徒
春北風小町にかけよ苔衣  三郎
  拠・小町と僧正遍昭との機智問答 後撰和歌集雑3-1195
春の雨浴びて大きくなれるかな  文福
  大きくなれるにちがいない。大きな温かい句
咲くほどに寒さ際立つ梅林  灰虹
のど鳴らしメジロゆらすや梅が香よ  庭慈
川沿いのさくら色付く散歩道  苑葉
  →<みるみるに川沿いさくら色づけり>はどうでしょう。
その名をば「おかめ」と言いし桜かな 文福
  「おかめ」は丸顔、鼻低、額広、豊頬。文楽人形ではお福。神楽では最古の女官。アメノウヅメノメノミコト。狂言では乙御前、福女 乙の転訛でオタフク。男がひょっとこ。その桜がおかめの雰囲気があったのか、それとも花筵の宴でオカメ  ヒョットコが踊ったのか。

秀句三選

入選七句

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