総 評
今回はグランプリなし、となりました。芥川賞でも候補作なしという年がありますがエクステリア俳句も芥川賞なみになりました。候補作なしというものの実は五幸さんの「おんぶして大空捨てたバッタかな」が最有力候補でした。でもグランプリはやはり月間の秀句欄を積み重ねてきてほしい。
全体では斬然たる実力を示す露徒さん、文福さんの句がありますが、角川賞のばあいでも角川源義氏や照子氏が角川賞をうけたという話はききません。
■準グランプリ3句
おんぶして大空捨てたバッタかな 五幸
おんぶバッタはどうして大空を捨てたのだろう。このバッタは高い志をもっていたのだ。碧い天空をめがけて力強く飛ぼうとした。でも背中の重い宿命がバッタをとばせることができなかった。悲しい思いで諦めたのだ。宿命は重い介護であったか、なにかの言い知れぬ憂愁と鬱屈であったか、やがて弧を描いて落下してきた。(おんぶバッタは実は交尾のための雄が雌の背中に直角に曲がった爪でしがみついているバッタの種名)。
法師ぜみ休暇の終えし子の発てり 山法師
帰省していたあの子たちが走り回って、蝉だバッタだと騒々しかったのが一気に閑かになってしまった。なにかぽっかり深く淋しい。つくつくぼーしだけがしきりと鳴いている。
誰も来ぬ座敷賑わう雛飾り 雅柳
誰もこない座敷が賑わっている。というのは逆説である。人ひとりいない。でも、ガランとした部屋では、五人囃しや官女たちで盛りあがっている。笛、小鼓、鉦のしらべで賑わっている。つまり主役の子供たちはすでにテレビにしがみ付いているか部屋にこもってマンガを読み耽っているのだ。何時の日も最初だけは義理のようにつきあうがすぐいなくなる。親が子供の幸せを祝ふセレモニーとなる。
■審査員特別賞
空っぽのでで虫二つ秋の風 左近
なかみのすっぽり抜けた蝸牛の殻だけが二つポツンとある。なんともいえぬ寂寥感がある。〈秋の風〉の季語の斡旋がきいている。〈でで虫が桑で吹かるる秋の風 綾子〉〈なきがらや秋風かよふ鼻の穴 蛇骨〉
■最多秀句賞
緑舟さんの句には天からふってきた鉤のような不思議な言葉が鏤められる。そのカギを解かないと句意に到達できない。カギを解くと俄然面白い。博学と詩魂の人である。
来山の碑(いしぶみ)斜(はす)に猫の妻 緑舟
〈来山〉は江戸の俳人。猫の句があり漱石の鏡子夫人と猫の髯についての会話の内容がカギとなる。秀句欄の独占的支配者となった。
選者のこのみもある。でも選考基準は様々な角度がある。多くの人が、グランプリへの登竜門である秀句欄への積極的なチャレンジをお願いしたい。
■評後感想
回を重ねてチャレンジへの参加者が雪だるま的にふえ毎回50人ぐらいになりました。でもエクステリア業界の裾野を見渡せば1000人位にふえてもおかしくないと思います。からだとあたまの健康。チャレンジ精神。人生100歳時代をむかえて若々しく愉しい人生をおくるよすがに。101歳の日野原先生も100歳から俳句をはじめました。
でも本当いえば10人ほどの単位で句会を100句会ほどもつのが一番理想的です。句会はまず短冊を作ってどこかの部屋を有料で借りて、俳句の先生の前にかしこまって・・というのはもう時代遅れ。パソコンとキャッチャーシステムを使って溌剌と愉しい月1の句会を愉しんでいるサークルがエクステリア&ガーデン界に既にふたつあります。
選者の場合は別に10年前から実践している会があり、123回(123か月)になります。吟行も重ね句集〈赤坂交差点〉も発行しました。パソコンとキャッチャーシステムの句会のやり方は簡単です。「俳句にチャレンジ係」に問合せてください。
秀句3選(23年10月~24年12月)