第4回グランプリ決定
第4回「俳句にチャレンジ」の年間賞が決定いたしました。応募総数678作品に達しました。毎月の御応募大変ありがとうございました。今回は残念ながらグランプリ該当作品なし、となりました。理由については総評をご覧ください。が、その代わり準グランプリが3作品に。そして、審査員特別賞1作品、年間秀句最多賞1名(10句)、年間7句選に7作品、合計21作品が選出されました。エクステリアは季節を感じる仕事。俳句はそれを表現できる短詩です。今後とも皆様の投句をお待ちしております。
  • ◆グランプリ
          該当作品なし
  • ◆準グランプリ
          おんぶして大空捨てたバッタかな   五幸(福岡)
  • ◆準グランプリ
          法師ぜみ休暇の終えし子の発てり   山法師(宮崎)
  • ◆準グランプリ
          誰も来ぬ座敷賑わう雛飾り   雅柳(福岡)
  • ◆審査員特別賞
          空っぽのでで虫二つ秋の風   左近(長野)
  • ◆最多秀句賞
          赤まんま瞽女に似ている野の仏他9句   緑舟(大阪)
  • ◆年間入選7句
          リハビリに箸で煮大根ふたつ三つ   こころ
          落ち葉掃き芋を買おうか買うまいか  大福
          田舎道いつもの顔や西瓜売り     大雅
          雨つぶて石畳の艶際立てり      蓮根
          花冷えや両手でつかむ握り飯     風水
          大楠や風も光も豊の秋        耕泉
          天竺の花は法悦桜かな        明月

総 評

今回はグランプリなし、となりました。芥川賞でも候補作なしという年がありますがエクステリア俳句も芥川賞なみになりました。候補作なしというものの実は五幸さんの「おんぶして大空捨てたバッタかな」が最有力候補でした。でもグランプリはやはり月間の秀句欄を積み重ねてきてほしい。
 全体では斬然たる実力を示す露徒さん、文福さんの句がありますが、角川賞のばあいでも角川源義氏や照子氏が角川賞をうけたという話はききません。

■準グランプリ3句
 おんぶして大空捨てたバッタかな 五幸
 おんぶバッタはどうして大空を捨てたのだろう。このバッタは高い志をもっていたのだ。碧い天空をめがけて力強く飛ぼうとした。でも背中の重い宿命がバッタをとばせることができなかった。悲しい思いで諦めたのだ。宿命は重い介護であったか、なにかの言い知れぬ憂愁と鬱屈であったか、やがて弧を描いて落下してきた。(おんぶバッタは実は交尾のための雄が雌の背中に直角に曲がった爪でしがみついているバッタの種名)。
 法師ぜみ休暇の終えし子の発てり 山法師
 帰省していたあの子たちが走り回って、蝉だバッタだと騒々しかったのが一気に閑かになってしまった。なにかぽっかり深く淋しい。つくつくぼーしだけがしきりと鳴いている。
 誰も来ぬ座敷賑わう雛飾り 雅柳
 誰もこない座敷が賑わっている。というのは逆説である。人ひとりいない。でも、ガランとした部屋では、五人囃しや官女たちで盛りあがっている。笛、小鼓、鉦のしらべで賑わっている。つまり主役の子供たちはすでにテレビにしがみ付いているか部屋にこもってマンガを読み耽っているのだ。何時の日も最初だけは義理のようにつきあうがすぐいなくなる。親が子供の幸せを祝ふセレモニーとなる。

■審査員特別賞
 空っぽのでで虫二つ秋の風  左近
 なかみのすっぽり抜けた蝸牛の殻だけが二つポツンとある。なんともいえぬ寂寥感がある。〈秋の風〉の季語の斡旋がきいている。〈でで虫が桑で吹かるる秋の風 綾子〉〈なきがらや秋風かよふ鼻の穴 蛇骨〉

■最多秀句賞
 緑舟さんの句には天からふってきた鉤のような不思議な言葉が鏤められる。そのカギを解かないと句意に到達できない。カギを解くと俄然面白い。博学と詩魂の人である。
 来山の碑(いしぶみ)斜(はす)に猫の妻 緑舟
 〈来山〉は江戸の俳人。猫の句があり漱石の鏡子夫人と猫の髯についての会話の内容がカギとなる。秀句欄の独占的支配者となった。
 選者のこのみもある。でも選考基準は様々な角度がある。多くの人が、グランプリへの登竜門である秀句欄への積極的なチャレンジをお願いしたい。

■評後感想
 回を重ねてチャレンジへの参加者が雪だるま的にふえ毎回50人ぐらいになりました。でもエクステリア業界の裾野を見渡せば1000人位にふえてもおかしくないと思います。からだとあたまの健康。チャレンジ精神。人生100歳時代をむかえて若々しく愉しい人生をおくるよすがに。101歳の日野原先生も100歳から俳句をはじめました。
 でも本当いえば10人ほどの単位で句会を100句会ほどもつのが一番理想的です。句会はまず短冊を作ってどこかの部屋を有料で借りて、俳句の先生の前にかしこまって・・というのはもう時代遅れ。パソコンとキャッチャーシステムを使って溌剌と愉しい月1の句会を愉しんでいるサークルがエクステリア&ガーデン界に既にふたつあります。
 選者の場合は別に10年前から実践している会があり、123回(123か月)になります。吟行も重ね句集〈赤坂交差点〉も発行しました。パソコンとキャッチャーシステムの句会のやり方は簡単です。「俳句にチャレンジ係」に問合せてください。

 秀句3選(23年10月~24年12月)

  • 10月
  • 空っぽのでで虫二つ秋の風  左近
  • 稲刈りの半ばを目途ににぎり飯 こころ
  • 文明や大地の上の忍ぶ草  利涼
  • 11月
  • カーポート新車を入れし秋の朝  雅柳
  • 赤まんま瞽女に似ている野の仏  緑舟
  • 芋の葉の露玉ひとつこぼれけり  山法師
  • 12月
  • 喉仏あがりしままの秋の空  緑舟
  • リハビリに箸で煮大根ふたつ三つ  こころ
  • 新蕎麦と直筆の幡蔵の街  左近
  • 1月
  • 湯の町の看板見えず雪煙り  風水
  • 新年の挨拶互いにフエンス越し  雅柳
  • 落ち葉掃き芋を買おうか買うまいか  大福
  • 2月
  • 三脈の鎮まりゆくや薄氷  緑舟
  • 新雪に足跡付けてどこまでも  トンボ
  • 尋ぬれば幾度の試練仏の座  利涼
  • 3月
  • 水仙を過ぎて香りに振り返り  こころ
  • 来山の碑斜に猫の妻  緑舟
  • 小春日に座りの悪い庭石と  左近
  • 4月
  • 誕生花竹馬の友の春見たり  利涼
  • 誰も来ぬ座敷賑わう雛飾り  雅柳
  • 花冷えや両手でつかむ握り飯  風水
  • 5月
  • 青葉闇合わせ鏡に映るもの  緑舟
  • 新聞の兜の動く草のなか  五郎
  • 花嫁のかんざし撫でる柳かな  風水
  • 6月
  • 晩節や四方の雨打つ燕子花  緑舟
  • パステルが原色となり街は夏  こころ
  • 砂時計ガラスの中の春の山  左近
  • 7月
  • 月明かり消えて帯引く蛍かな  利涼
  • 魂魄をなぞれば琴(リラ)座傾きぬ  緑舟
  • 山里の薄紅色や合歓の花  トンボ
  • 8月
  • 汗だくの首にまぁるく天瓜粉  こころ
  • 風死すやコツと廻りし後生車  緑舟
  • 田舎道いつもの顔や西瓜売り  大雅
  • 9月
  • 処理場へ貨車連なりて雲の峯  緑舟
  • 法師ぜみ休暇の終えし子の発てり  山法師
  • 湯上りに下駄を鳴らすや虫の声  風水
  • 10月
  • 秋の蚊の半透明の命かな  こころ
  • 日傘さし威風堂々妻きたる  左近
  • 露天風呂ワインに浮かぶ月を呑む  大雅
  • 11月
  • 秋晴れに白き立山紅欅  淡雪
  • 歳時記のいつしか秋となりにけり  左近
  • 足跡で逃げては拾う笑い栗  トンボ
  • 12月
  • 左眼は禍見るものや銀杏落ち  緑舟
  • 江戸の旬湯気も食わんかねぎま鍋  小穏
  • 小春日の形どおりに眠る猫  こころ

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