総 評
重量感と深みが増してきた 村野 太虚
エクステリア業界俳句、第二回グランプリ受賞者と受賞句、そして準グランプリ、審査員特別賞、入選句がきまりました。昨年と比較して総体に一段の重量感と深みが増してきて、「エクステリア俳壇」が安定して参りました。こころからお慶び申しあげます。
さてグランプリ受賞句
ポンと打ちひとり頷く西瓜かな こころ
作者「こころ」さんは昨年すでに「リハビリの石段軽し初詣」で登場していましたが、今回は秀句欄に前後七回も掲載されるという好調ぶり。「頭から焼酎浴びし実梅かな」など軽快な句にまじって「老いし母湯けむりに見る山桜」などもあります。
「西瓜」の「ポンと打ち」「ひとり頷く」にはおそれいりました。たしかに西瓜を手にするとポンと打ちたくなる。西瓜には打ちたくなる愛嬌がある。またその音を聴いて、一人頷くのです。この「無意識の表情」を軽妙にキャッチしています。
準グランプリ賞
寒椿雀泊れと雪落とす トンボ
寒椿が雀に泊ってゆけという。寒椿もさびしいのでしょう。ふっくらと肥えている雀の気をひいて雪までおとした。お伽のような、また夢のようにやさしい世界です。「寒椿」と「雪」は季重りですが寒椿が主季語で雪はモノとして捉えましょう。美しく愉しい句です。「霜はしら日の出迄の覚命かな」は「おぼつかな」とこちらが勝手に読んで、面白いと思った句もありました。
準グランプリ賞
春暁のテーブルにあるパスポート 左近
春暁がよいと思いました。企業戦士と春暁のパスポート。同じ作者で「声かけしばかりに打たれ水鉄砲」も水鉄砲の気合をとらえていて秀逸です。
審査員特別賞
昨年、グランプリ受賞の利涼さん。今年も重厚な句を頂きました。圧倒的な存在感で六句、六回秀句欄に。
最澄と琵琶湖に浮かぶ秋の空 利涼
秀冷の湖へ大師と舟で出て叡山を見上げている、という幻想の詩。最澄は近江の国、古市郷(大津)の生まれで俗名を広野といった。かくて利涼さんの琵琶湖の秋はいよいよ澄みきって心も澄み渡るのである。
「走馬灯刹那のうちに里帰り」の一句が里帰りのあわただしさと哀愁を、季語「走馬灯」によって痛切適確に描写されている。そのほか「悟り」を表現された句がきわだった特徴であり凡人に忖度しがたいところもある。
秀句3選(10月~9月)