第5回グランプリ決定
第4回「俳句にチャレンジ」のグランプリが決定した。今回は諸事情が重なり平成25年1月から26年12月の2年分を対象に選考が行われた。25年の年間投句数は684句、26年が698句合計1382句の頂点にたったグランプリ句は「残されし漁船赤錆赤トンボ」。作者は大雅さんこと大森義雅氏である。毎月コツコツと投句を続け月間秀句にも9回ほど選ばれている。お陰様でそうした俳人が30名程に増え、この俳句にチャレンジを支えてくれている。最初はみな初心者である。季節を感じ季節を読むことで養われる視点や表現がある。それは必ずや「感性」となって仕事にも跳ね返ってくると思われる。季節を感じる仕事エクステリア。新人大歓迎、是非チャレンジを!次回は27年1月~28年9月を対象にグランプリを発表。
  • ◆グランプリ
          残されし漁船赤錆赤トンボ   大雅
  • ◆準グランプリ
          薄氷を我先に踏む赤白帽   風水
  • ◆準グランプリ
          物真似の上手な百舌にだまさるる   山法師
  • ◆年間秀句7句
          赤ちゃんの片方の靴春がたみ  特許
          柿を食う俳句が上手になるように  左近
          一人立ち一人入りて春炬燵  雅柳
          耕運機白鷺引き連れ土返す  五幸
          雪帽子溶けて顔出す梅蕾  トンボ
          河鹿笛流るる先にししおどし  耕泉
          ふるさとに戻るあてなし蒲の絮  花水木

総 評

■グランプリ
 残されし漁船赤錆赤トンボ  大雅
残された漁船!なぜ残されたのだろう。いったい何から何へ残されたというのだろう。このオンボロの漁船は歳老いて出漁できなくなったのか。赤錆だらけで港の隅っこにうずくまるようにひっそり浮かんでいる。それを赤トンボが取り囲んでいる。赤トンボは赤ん坊を背負った女の子とか、赤錆て残された船などが大好きなのだ。アカ、アカのリフレインのよさ。童画的な楽しい景!

■準グランプリ
 薄氷を我先に踏む赤白帽  風水
 ワッと教室から飛び出してきたワンパク小僧たち。校庭の薄氷に突進。パリパリ、パリパリ。我先に踏みまくる。爽快な破裂音が愉しくて破りまくる。二月の冷たい風が頬を赤く染めているが。
 物真似の上手な百舌にだまさるる  山法師
 百舌はほんとに真似上手。スズメがよってきたらスズメの鳴き声。コガラがやってきたらコガラの鳴き声。コガラが仲間がいると思って近よってきたらコガラをパクリ。百舌はほんとに物真似上手。

■年間秀句7句
 赤ちゃんの片方の靴春がたみ  特許
 背中に赤ちゃんがこっくりこっくり。でもアレレ!片っぽの足のさきに靴が無い!どこかで抜けて落としたか、さっきの叔母さんの家で落として来たのか、まるで赤ちゃんのカタミに置いてきたみたいに。春風が足をなぶっている。下5の〈春がたみ〉がうまい。
 柿を食う俳句が上手になるように  左近
 柿も俳句も好き。私も柿大好きさんの子規のように俳句がウマくなるのでないかしらん。
 一人立ち一人入りて春炬燵  雅柳
 いまバタバタと一人炬燵を抜けたとおもったらすぐ一人入ってくる。春炬燵のあわただしさ。
 耕運機白鷺引き連れ土返す  五幸
 耕運機と私のうしろを何処からきたのか白鷺がヒョコヒョコついてくる。鋤き返して帰ればまたヒョコヒョコついてくる。
 雪帽子溶けて顔出す梅蕾  トンボ
 綿帽子をかぶっていたのに春がきたら可愛いい梅の蕾が。ダブル季語ながら梅を可憐なオブジェクトとみて。
 河鹿笛流るる先にししおどし  耕泉
 河鹿の声につられて山の奥の奥へ辿れば、あの石鼎の鹿火屋のようなししおどしが。
 ふるさとに戻るあてなし蒲の絮  花水木
 大黒さまの蒲の絮。ふわふわ浮いてあてどもない。

秀句3選(25年1月~25年12月)

  • 1月
  • 柿を食う俳句が上手になるように  左近
  • 凍結の朝は筵の道を行く  特許
  • 寒の水鳥肌たてて飲みにけり  山法師
  • 2月
  • 野良犬や行くあての無き春の雨  山法師
  • 地に落ちて命はじまる木の実かな  左近
  • 白い息かじかむ手が持つ単語帳  大福
  • 3月
  • 一人立ち一人入りて春炬燵  雅柳
  • 雛納めしばし夫婦の会話かな  小穏
  • ふきのとうあなたは味噌か天ぷらか  大福
  • 4月
  • 昼酒や考妣が家の春の雪  緑舟
  • 春の朝孟浩然に親近感  大福
  • 散りてまた湖面を咲かす桜かな  淡雪
  • 5月
  • 赤ちゃんの片方の靴春がたみ  特許
  • 自らの花衣脱ぎ青葉萌ゆ  山桜
  • 友は皆定年になり鳥帰る  雅柳
  • 6月
  • 薫風を巻き込み落ちる小坂滝  淡雪
  • 家々の灯を映ろふ植田かな  特許
  • 空家かな雨や紫陽花百あまり  左近
  • 7月
  • 変哲の声の懐かし氷売り  大雅
  • 耕運機白鷺引き連れ土返す  五幸
  • 梅雨の鳥墨色の空を渡りけり  花乃
  • 8月
  • 惇夫忌や一千年後の雲が行く  緑舟
  • 兄ちやんと呼ばれ子どもに返る盆  大雅
  • 炎天や音たて氷噛みてをり  山法師
  • 9月
  • 古代鏡葡萄の青の海がある  緑舟
  • 名月や話さぬ父の老い思う  小穏
  • 網の目をくぐるか否か鮎次第  淡雪
  • 10月
  • 物真似の上手な百舌にだまさるる  山法師
  • 手を引きて白寿の君と月見かな  トンボ
  • 秋晴れの布団に残るもみけむり  伯穂
  • 11月
  • 父見舞う闇の向こうに冬近し  大雅
  • セキレイの尾にさそわれたおさな頃  五幸
  • 穭田を過ぎて背中を真直ぐに  特許
  • 12月
  • 山眠る雉の一鳴き消えいりぬ  花水木
  • 南泉斬猫草履の上の霙酒  緑舟
  • 寒ブリを捌く女将の声飛ぶや  風水

秀句3選(26年1月~26年12月)

  • 1月
  • 地吹雪や湯宿探しはままならず  風水
  • 九十八語りて遠の鐘冴ゆる  緑舟
  • 冬ざるる古道の根石語りけり  耕泉
  • 2月
  • 薄氷を我先に踏む赤白帽  風水
  • 雪帽子溶けて顔出す梅蕾  トンボ
  • からからと小銭の落ちる寒さかな  左近
  • 3月
  • 包装紙解く間も香り桜餅  左近
  • 独寝に廓話の二月尽  緑舟
  • やわらかき春一番のふきにけり  大雅
  • 4月
  • 妖かしの桜のしたで酔いしれり  大雅
  • 空くじなし朝顔の種当たりけり  左近
  • 桜坂母の手を取り七回忌  秋休
  • 5月
  • 浮き玉のカモメ吹かれて夏近し  風水
  • ピカピカのカバンに映るハナミヅキ  淡雪
  • 初夏の風ポンポン船の音運ぶ  花水木
  • 6月
  • 薫風やカ―テン越しの贈り物  あい
  • 波止場からおろしやの寺にみなみ風  緑舟
  • 五月雨や鎮魂の浜フラガ―ル  大雅
  • 7月
  • 鮎膾七つ下がりの雨となり  緑舟
  • 糸とんぼ新幹線がこのまちに  特許
  • 河鹿笛流るる先にししおどし  耕泉
  • 8月
  • だぶだぶのステテコ悲し将棋盤  大雅
  • 子供らの消えて夕顔花の刻  緑舟
  • 三連の水車キラキラ青田風  耕泉
  • 9月
  • 門石に猫おさまりて秋日和  特許
  • てのひらに量る稲穂の重さかな  左近
  • 禅寺や蝉が肩押す夕間暮  明月
  • 10月
  • 残されし漁船赤錆赤とんぼ  大雅
  • 秋晴れに黒煙上がる登り窯  淡雪
  • ふるさとに戻るあてなし蒲の絮  花水木
  • 11月
  • シーサーもおじいもおばあも種子取祭  大雅
  • いつもより長く鏡に時雨かな  特許
  • 黄昏に連れて帰るはおなもみや  灰虹
  • 12月
  • 秋の暮枕にならぬものばかり  緑舟
  • 通学路ザクザクザクリ初氷  大雅
  • 紅葉の水子供養や三十年  雅柳

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