第94回 2016年6月

句評     村野 太虚
凌霽花ビル解体の重機音  穭
  はらわたに響くような重機の解体音には、大輪の濃厚でずっしりしたのうぜんかつらが響きあう。赤い花のつる性木本。気根をだして壁、樹木について高みへのぼる。<雲掴み天へ天へとのうぜん花  正江>

端居
  夏夕方、涼を求めて縁端にでてくつろいでいること。庶民的な納涼といへる。浴衣や夏布団、団扇 蚊遣りなどが景物としてすぐうかぶ。在来の木造建築においてふさわしい。

草木照る水遣り終え夕端居  拶木
ガラス越し揺れる緑に端居かな  花乃
夕端居数さだまらぬ星ヒカリ  栗鼠
ときおりの小さき風を端居かな  文福
  浴衣がけで縁にすわっておればときおり風をおくってくる。ゆったりと団扇をつかっている。すると、また小さな風がくる。風景に端居している自分もまた自然景物そのものだ。
棉菅の絮や雀の毛槍ほど  三郎
  雀の毛槍は棉菅の別名。大名行列の先をゆく毛槍の連想でウマいネーミングをしたものだ。ネーミング者への賛辞。
文庫本文字が膨らむ梅雨晴間  露徒
  文庫本の文字がむくんだようにぼったりしてくる。その梅雨晴間に寝ころんで読んでいる。
睡蓮のころがす露や雨あがる  山法師
  しらべも美しい。景も美しい。
田植祭伊雑の宮に響く笛  淡雪
  志摩市の伊雑御田植祭日本最大田植祭のひとつ。<ささらすり>などの田楽の音が初夏の到来をしらせる。
塀の上小鳥も猫も梅雨晴間  秋水
  <伝教会百禽浄土雨ふりぬ 乙郎> 小鳥も猫も欣喜雀躍。
生ビール貸し切り列車窓曇り  大雅
  買い切りの豪華旅行かとおもったが、たったひとりの貸し切りかも。
梅雨晴間活路を探る蔓の先  文福
  AIの眼がついてでもいるように。

秀句三選

入選七句

第25回  第26回  第27回  第28回  第29回  第30回  第31回  第32回
第33回  第34回  第35回  第36回  第37回  第38回  第39回  第40回
第41回  第42回  第43回  第44回  第45回  第46回  第47回  第48回
第49回  第50回  第51回  第52回  第53回  第54回  第55回  第56回
第57回  第58回  第59回  第60回  第61回  第62回  第63回  第64回
第65回  第66回  第67回  第68回  第69回  第70回  第71回  第72回
第73回  第74回  第75回  第76回  第77回  第78回  第79回  第80回
第81回  第82回  第83回  第84回  第85回  第86回  第87回  第88回
第89回  第90回  第91回  第92回  第93回