第88回 2015年12月

句評     村野 太虚
路地裏の鉦透き通り寒の内  穭
  路地裏を二丁鉦が通る、小太鼓、篠笛が通りすぎていった。ガランと鎮まる路地裏に鉦の音の余韻がのこっている。空には寒月が鎌のように冴え返っている。  

屠蘇
  年頭に用いる薬種で延命長寿の縁起によるもの。さんしょう、防風、肉桂などを調合してつくる。中国三国志時代の名医華柁の処方といわれる。嵯峨朝の平安時代に渡来した。 

代替わりお屠蘇代わりの白ワイン  文福
  正月、ワインでやるのも洒落ていますね。
老夫婦苦楽を語り屠蘇祝ふ  風水
歳の数祝いめでたや屠蘇重ね  大雅
屠蘇の酒喉も心も新たなり  淡雪
  重症もようやく癒えてきて、、、。
二児の母注ぐ娘の屠蘇に酔ふ  空飛
仔犬にも小皿にすこし屠蘇と海老  三郎
星屑をいくつ拾はむ冬三日月  穭
  寒の空に鎌のように鋭い三日月、きらめく星屑。
松飾り銀に塗られし猫柳  文福
  早春を告げてくれるあの銀色の可愛い猫柳。<銀に塗られし>が絶妙。
越の海より唇赤き雪女  三郎
あと二日未連練タラタラ行く年よ  拶木
  れもやりたかった、これも、、、。
陽だまりのながき参道初詣  高白
  明治神宮の参道もながい。
春霜が光に浴びて松燃ゆる  宛葉
搗きたてのあんころ餅に笑顔咲く  花乃
数え日の空気に似合うモノト―ン  栗鼠
かたばみの葉裏を合す寒夜かな  文福
  かたばみは噛むと酸っぱい汁が口中にひろがるので酢漿草。寒夜が効いている。 

秀句三選

入選七句

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