第78回 2015年2月

句評     村野 太虚
春寒にパヒュウムの香やシャンゼリゼ  穭
  一団を連れてシャンゼリゼを通りすぎるとパヒュウム(香水)のかおりがした。海外句は観光絵葉書になりがちのところ<春寒>の季語が生きて句に詩情が生まれた。カタカナ効果。巴里の春は寒かった。


  春という言葉にはもののときめく明るいひびきがあるが、暦法のうえでは立春(二月四日ごろ)から立夏(五月六日ごろ)の前日までを指す。気象上では三月、四月、五月ごろ)の前日までを春季と定めているが一般には二月末枯草にわずかな新芽が萌えはじめるころから四月末までの印象。(飯田龍太)

庭苔を春の淡雪また隠す  淡雪
  美しい描写ではあるが季語を三つもかさねるのはいかがか。
春寒し寂しさ抱き前を向く  花乃
ののしりの口にも吹くや春の風  文福
  江戸カルタ風でもあるが現代に通じるウマい句。ののしりながらもそれだけでない、ののしっている人の分厚い人間味。ののしられている人のさまも。
聖堂の扉をゆする春の風  露徒
  湯島の孔子をまつる大成殿の扉。眠っていた孔子をトントンと起こす春の風。
孫くれしおれおれ漫画あたたかし  三郎
  小四の孫がおれおれ詐欺の漫画を描いておくってきた。ジサマも腰心しろ?モンスタ―のような怪漢。国をあげてのバカバカしい詐欺要心。ついに孫の漫画まで。 
2月尽いつか来る日を風の中  文福
  いつか来る日? 未来のいつか来るであろう日に風の中に立っている・・不思議さがこの句に牽きつける。

秀句三選

入選七句

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