第64回 2013年12月

句評     村野 太虚
裸木に鳥止まりきて落ち着かず  露徒
  木の葉がみっしり茂っていてくれてこそ鳥も心落ちつくのだ。それがこうツルツルされていたのでは落ちついて木にとまれないではないか。犀利な観察。

初日
  元日の日の出である。初日を拝むために海辺や高地へでかける風習があり、東京では昔、神田明神、芝高輪の海浜、深川の須崎などへ初日の出を拝むために群集したそうである。現代はノッポビルが林立しているため困難となった。のっぽビルのてっぺんにでものぼって・・・と思ってみてもその時間帯の電車が!
<日の光今朝や鰯のかしらより 蕪村><朝日さす相模たんぼへ出て父は 湘子>
関連季語が初茜、初曙、初東雲、初明り・・・・。

海の辺に初日あがむる人並ぶ  山法師
屋台飯背中温まる初日かな  五幸
音もなき松に照らさる初日の出  苑葉
初春やわれも足踏む三番叟(さんばそう)  五郎
   旧芝の御賜公園で初日に百人くらいあつまり、めでためでたの三番叟をやっている。鈴を鳴らし足固めの舞をおどる。座長が鈴をふり観客も一斉に足固めの舞を踊る。
大掃除出てくる出てくるいらぬもの  蟻
   年末年初はゴミが大変。30日までは1年のゴミ。新年は6日まで新年のゴミの山。収集車がもてる。
極月や傘に響ける雨の音  櫓
   極月→12月の異称。ごくげつ。
煩悩が足を運ばせ手をあわす  小鰤
   そのとおり、ですが、やはりここは季語がほしいですね。
亡き友と酒酌み交わす暖炉の間  秋休
   しみじみと暖炉の間で<亡き友>と酌み交わす。手酌ですね。
病床ですがる指先母子草  文福
   <母子草>が泣かせますね。

秀句三選

入選七句

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