第52回 2012年12月

句評     村野 太虚
カラカラと夜の枯葉が笑いけり  露徒
夜の街を通りすぎた。乾いた音をたてて枯葉が舞い狂っていった。なにか不気味な感触もあり、ハロウィンの世界を連想する。
雪9句
 古代、雪は豊年のしるし。精霊が村へ豊年をもたらすものと考えた。田楽のおこなわれる時は雪をつかんで投げ<雪でござい、雪でござい>と連呼した。そういう生活的伝統が連俳で春の花、秋の月、夏の時鳥とならび冬を季節の代表的景物としてきた。
  • あわれなり雪が織りなす墨絵図や  蓮根
    あわれ、はおもむきがあるの意か。
  • 雪雲が太陽食べて姿消す  トンボ
    太陽を食べる 発想がユニーク。
  • 雪の夜は背中丸めて犬だんご  蓮根
    犬だんごとは数匹の犬が暖を取り合うように体を寄せ合って丸まっている状態を指すのだろう。
  • 雪もまた楽しいテニス幸せだ  トトロ
    それは愉しいでしょう
  • 雪かきや気持ちは二十歳力なき  風水
  • 降りしきる雪の中にて鐘を聴く  特許
  • 初雪やユトリロのごとき景色かな  空飛
    ユトリロが好きだから雪の光景もユトリロ調にみえる
  • 降りすぎた除雪遅れて靴埋る  淡雪
  • 腰痛にミニ除雪機活躍す  淡雪
    脊椎管狭窄症。硬質コルセットをすれば痛みはとまります

  母吊りし氷餅なら紅・こんぶ  五郎
     氷餅にも色とりどりの氷餅を母は吊ってくれた。キリ昆布をまぜたもの。紅色のもの。豆をいれた豆もち。

  小さくも深き足跡雪雀  文福
     ちいさいが深いのである。雪の朝の雀はまるまると肥えて可愛らしい。その重みで沈むのだ。

秀句三選

入選七句

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