第40回 2012年1月

句評     村野 太虚
  • 龍の玉はずむことなく隠れをり  露徒
     龍の髯の実である。庭草として庭石や垣根のあしらいに多くもちいられる。初夏のころ葉の間から淡紫色の小花を咲かせ、花のあと球状の実をつけ、冬、熟して碧い龍の玉となる。龍の髯はその細い葉を龍の髯に見立てての命名。つややかなその碧い玉は美しい。それがみだりに弾んだりしないで内にひそんでいるたたずまいに気品がある。龍の威厳を内にたたえている。文福さんの*小春日の句とともに心懐句というべきか。
    *小春日をまといて橋を渡りけり
雪5句
  • 綿入れのますぐな縫い目雪明り 文福
      まっすぐでやさしくあたたかい句。
  • 川黒く雪の間を流れけり 露徒
      雪が純白さをますほど雪間を這ってながれる川の黒さが鋭くつたわる。
  • 海鳴りや雪もとどめず風岬 五郎
      下北大間の岬。言いすぎているかもしれない。<言いおおせてなにかある>(芭蕉)
  • サンタさん南国山に雪化粧 トンボ
      南国土佐の嶺々にもうっすら雪がやってきたよ、赤外套、白ひげのおじいさん。
  • 初雪や触れて溶けたる吾子の頬 凌雲
      可愛い子の頬が初雪を少し受けてすぐ消えた。
雪名句
雪は豊年の瑞(しるし)。雪久しい時、その間、稲の発育が約束される。古代は山に降る雪をもって農作物の豊凶をうらなった。土地の精霊が豊年を村の貢ぎとして雪を降らせるものと考えた。田楽の際、まわりの者が雪を投げながら「大雪でござい、大雪でござい」慶び囃した。村の幸福を予祝する花として雪を考えた。<巻向の桧原もいまだ雲居ねば小松が末ゆ沫雪流る 人麻呂>
  • 馬をさえながむる雪のあしたかな 芭蕉
  • 応々といえど敲くや雪の門    去来
  • 雪崩音碧落へ抜け谺なし     日郎/li>

秀句三選

入選七句

第25回  第26回  第27回  第28回  第29回  第30回  第31回  第32回  第33回  第34回  第35回
第36回  第37回  第38回  第39回