第28回 2011年1月

総評
オリオン座
 ひととせの重さを解くや除夜の鐘  露徒
 梵鐘殷々と響き108の煩悩を解く。ひとつひとつに1年ふしぶしのことが蘇(よみがえ)り重かったことも今は懐かしく鐘の音が癒してくれる。この夜107回撞かれ、年越して1回。津々浦々に鳴りひびく。
*梵鐘殷殷(ぼんしょういんいん)と:釣鐘の音が鳴り響く様
 寒月や決めねばならぬことのあり  文福
 何か身の廻りに重大なきめごとが迫っているようだ。寒月→冷たくさえた冬の月。<決>以外がひらがなで寒月が事の重さを鋭く浮かびあがらせていて面白い。
 海坂や雲ほがらかに初茜  五郎
 海坂→うなさか(海神国と人の国との境)海のまるい水平線のかなたは<海神の国>であると古事記は考えた。<海坂を塞(さえ)て返りいり給ひ、>
提案座
 冬ざれや踠きながらの一路かな  →冬ざれや山の一路をあえぎつつ。
 梅一輪庭の広さに香り舞う →大寺や一輪咲きの庭の梅
 雪かきに年を感じる重みかな →雪かきの酷使にきしむあしの骨
 年賀状可愛い干支が羨まし →とりどりの兎や賀状束のなか
 雪女針刺しにくる二号棟 →雪女針さしにくる夜病棟

雪女は看護婦さんのことと思いますが、注射しにくる場所を詳しく。

秀句三選

入選七句

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